公開ワークショップ:
人工知能が浸透する社会を考える2016@STS学会

「人工知能が浸透する社会を考える2016」
科学技術社会論学会 公開ワークショップのご案内

日程:2016年11月5日(土)10:40-12:40
場所:北海道大学高等教育推進機構 D会場
   http://jssts.jp/annualmeeting/2016/STS2016_map.pdf

■趣旨

現在、人工知能に関する話題は多く、その社会的影響を議論する異分野間対話が求められている。「人工知能が浸透する社会を考える」研究グループは、人文・社会科学者、人工知能研究者と両者を有機的に結びつける科学技術社会論や科学コミュニケーションを専門とする対話基盤設計グループを設け活動してきた。

科学技術社会論学会でのOSが3年目となる本年度は、人工知能と人間のかかわり方について具体的な事例をもとに議論する。医療、税務、将棋などの知的な判断や意思決定が求められる現場に人工知能技術が入り込みつつある。このような具体的な現場で起きていることを比較することで考えるべき共通点や相違点などについて、会場とディスカッションを行う。


■スケジュール
□精神科医療における人工知能の活用に向けた法政策
藤田 卓仙(名古屋大学)
問診におけるIBMワトソンの活用など、機械学習ないしは人工知能を医学・医療分野に用いることに関して、国内外でいくつかの取り組みが始まっている。本発表では、特に精神科領域における人工知能の活用に向けた研究プロジェクトとして、発表者が参加している2つのプロジェクト(「表情・音声・日常生活活動の定量化から精神症状の客観的評価をリアルタイムで届けるデバイスの開発」プロジェクト、「高齢者の安全で自律的な経済活動を見守る社会的ネットワークの構築」プロジェクト)の取り組みを紹介し、それぞれに共通の課題となっている、健康・医療情報におけるデータ保護等プライバシーの取り扱いに関する法政策や精神科医療における人工知能活用上の課題等についての報告を行う。

□ゲノム医療と人工知能の研究開発段階における諸問題
井上悠輔、吉田幸恵(東京大学)
我々は「システム癌新次元」(新学術領域研究)の班活動の一環として、医療への実装を目指しつつも研究開発段階にある「人工知能」と社会との接点を検討している。本発表ではこのうち、次元の異なる次の二つの観点から話題提供をする。一点目は、学習機能を有する探索支援技術の研究開発のあり方が、がんゲノム医療の研究開発の進展に大きな可能性を秘めつつ、社会や患者を取り巻く制度環境にどのような影響をもたらしうるかを検討する。二点目は、こうした人工知能がこれから社会に広く普及していく中で、人と共存したり信頼関係を結んだりするためにはどのような形をまとって人々の前に姿を見せるべきか、擬人化傾向やその応用の社会的影響について検討する。

□税理士の人工知能に対する期待と懸念
加瀬 郁子(東京大学)、中村 崇二(中村一三税理士事務所)
人工知能研究や高度情報化社会の発展を背景とした「第四次産業革命」により、人間の仕事のあり方が大きく変わることが指摘されている。その中で特に税務・会計分野は、人工知能を使用したソフトウェアが市場に登場し、「機械により消える仕事」の上位にランクインするなど、業務自体の大規模な構造変化が不可避である。
本発表では税務・会計業務を行う専門家である税理士に着目し、①税理士業務と人工知能を取り巻く現状を概観し②税務・会計業務のうち機械に置き換わる可能性が高いものを同定し③税理士が人工知能に対して抱く期待と懸念を明らかにする。このように技術開発側ではなくそれを使いこなす専門家が抱く人工知能を用いた税務・会計業務の望ましい姿をあらかじめ提示することを通して、技術の導入による社会的混乱や不利益を可能な限り回避しその恩恵を最大化するためにはどのような仕組み作りが必要かを会場と議論する。

□現代将棋における棋士とソフトの相互作用をめぐって
久保明教(一橋大学)
2011年から4回にわたって行なわれた将棋電王戦は、現役のプロ棋士が初めてコンピュータ・ソフトウェアに敗北したことで大きな社会的注目を集めた。本発表では、棋士にとってはしばしば奇妙に思われる指し手によって大半の人間を凌駕する戦績をおさめたソフトの存在が既存の将棋のあり方をいかに変えたか/変えつつあるかについて検討し、特定の専門領域における知的能力に関して人間に匹敵/凌駕するソフトウェアの登場によって人間の営みや人間観がいかに変容するかを考察する。

□人工知能に関する異分野協同研究の視点と方法
AIR
現在、人工知能に関する話題は多く、その社会的影響を議論する異分野間対話が求められている。Acceptable Intelligence with Responsibility研究グループは、人文・社会科学者、人工知能研究者と両者を有機的に結びつける科学技術社会論や科学コミュニケーションを専門とする対話基盤設計グループを設け活動している。政府による干渉や産業による利益誘導に左右されない、異分野間の対話・交流を促すための媒体や基盤をボトムアップで構築し、対話を通して、人工知能の目指すべき共通アジェンダや社会の未来ビジョンを設計し、技術開発・実装時の新設計基準や規範・倫理・制度に関する価値観を提案することを目的としている。本報告ではプロジェクトの概観とこれまでの活動、そしてAIRの活動体制の在り方を紹介する。

■参加申し込み
特に必要ありませんが、もしよろしければ参加人数の事前把握のため、下記フォームから「本ワークショップへの参加理由」とご所属をご記入いただけますと幸いです。
https://iap-jp.org/jssts/conf2016/personals/login

■参加費
大会webの「参加費」欄を参照ください.